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桜の季節には街中が美しく染まるという閑静な住宅街に暮らしているのは、なんと19才7ヶ月というご長寿のミニチュアダックスフンド、ほたるちゃん。

オーナーさん曰く、頑固で我が道を行くタイプという彼女は元々オーナーさんのお姉さまが飼っていたダックスの子供で、4姉妹のうちのひとり。

このダックス姉妹はほたるちゃん以外もみんな17才まで生きたという長寿遺伝子の持ち主だけれど、中でもほたるちゃんは19才を半分以上超えた今もなお、自分の足でしっかりと立ち家族の中心として元気に暮らしています。

一般的にダックスフンドの寿命は12才から16才と言われていて、19才を超えるだなんて多くのダックスオーナーにとっては未知の世界であり憧れそのもの。

もともと長寿の遺伝子があったとしても、そこまで長く生きられるのは間違いなくその背後にオーナーさんの様々な工夫やコツのようなものがあるはずだから、その“何か”を掴むべく会いに行って来ましたよ。ほたるちゃんに!

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ほたるちゃんのお宅を訪ねた時にまず驚いたのは、ご自宅のリビングをマイペースに歩くその姿でした。

 

ダックスフンドは遺伝的にヘルニアになりやすいこともあり、その年齢まで自らの足で歩けるのは非常に驚くべきこと。

 

でも、ほたるちゃんは住み慣れた我が家をしっかりとした足取りで歩き回っているではないですか!

 

 

辻さん:

「ほたるを迎えた時には先住犬のレディというゴールデンレトリバーがいて、レディが旅立ってしばらくしてから再び楽(がく)ちゃんという名の保護犬だったゴールデンを迎えました。

 

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ゴールデンは大型犬なので雨の日以外は毎日朝夕に長めのお散歩をするのですが、いつでも先頭を歩くのは一番足の短いほたるなんです(笑)。

 

自分のことを大型犬と思っているのか、お友達のワンコ達と大勢で歩いているときも絶対に一番前を譲りませんでしたね。

 

 

きっと、その長いお散歩が足腰の筋肉を育てたのだろうなあ。そのお陰か、ダックスにつきものと言われるヘルニアの手術は経験がありません。

 

今は白内障から緑内障を患って目が見えなくなってしまったので、安全のため自宅内で自由に歩くのがお散歩になっているけれど、白内障にかかる17才までは毎日のお散歩が日課でしたね。

 

現在は目のこともあるので、ほたるが家具や物にぶつからないように極力家の中のものは移動させず、彼女が記憶している室内の状態を常にキープしています」

 

 

電気コードは足に引っかけないように壁に固定され、椅子の位置やクッションの位置まで毎日変わることがないよう整えられたお部屋。

 

ここはほたるちゃんにとって、きっと最高に居心地の良い空間。でも、19才までなんのトラブルもなく来たわけではなかったようで…。

 

辻さん:

「10才を超えるあたりまではすこぶる元気だったほたるですが、11才で歯周病になり左奥歯を抜歯、その2ヶ月後にはお腹にしこりを発見して乳腺腫瘍を摘出、その際に初期の子宮蓄膿症の症状があったことも分かり、同時に子宮も摘出し、全部で29針を縫う大手術をするなど、今までに全身麻酔手術を3度経験しています。

 

乳腺腫瘍と子宮の摘出手術は2日間の入院を擁する大手術だっただけに私も夫も心配していたのですが、退院の日は大きなエリザベスカラーをつけた状態で自力で歩いて出てきたのを見て嬉しいやらびっくりするやら。思えば本当に丈夫な子なんですね。

 

そして今考えると、ちょうどほたるが10才の頃に自宅をリフォームしたのですが、そういった環境の変化が体調トラブルの要因となったのか、リフォーム後に体調を崩したように思います。

 

その後、13歳で突発性前庭疾患を発症し、14才の時には再び歯周病で右の奥歯を抜歯するなど、やはり年相応の病気になっています。

 

14才での抜歯手術から今お願いしている動物病院へ変わったのですが、それまでのかかりつけ医では年齢を考慮してか投薬治療しか行えなかったため、歯の状態がかなり悪化していたようで顎の骨まで削る大がかりな手術となりました。

 

こうして改めて振り返るとほたるが体調を崩したのは、リフォームや先住犬だったレディが2008年に亡くなった時など、環境が大きく変わるタイミングだったような気がします」

 

 

辻さん:

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これは思い出すのも辛いのだけど、レディは庭で遊んでいた時に誤ってナメクジの駆除剤を舐めてしまい、授かった寿命を全うすることなく旅立ったのです。

 

それからの私はレディの死は自分の不注意だとずっと後悔していました。

 

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レディを亡くし楽を迎えるまでの約3年間は一人っ子だったほたるなので、当初ほたるは受け入れてくれるだろうかと不安だったけれど、彼女は持ち前の包容力で楽を迎え入れました。

 

そうして楽が来てからは再び元気を取り戻したので、やはりほたるにとっては相棒といえる存在がとても大切なんだと実感しましたね」

 

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様々な病気を乗り越えてきたほたるちゃんですが、その治療に当たってくれたのはオーナーの辻さんが全幅の信頼を寄せる獣医さん。

 

しかし、実際にそんな先生に巡り合うまでには紆余曲折もありました。

 

辻さん:

「以前はあちこち病院を変えるのは診ていただいている先生に対して申し訳ないとか失礼かもという感情があったのですが、先住犬のレディが瀕死の状態に陥った時、パピーの頃から診てくださっていた先生に思うような処置をしていただけず、その夜にレディを亡くしました。

 

当時は今のようにネットで様々な処置法を検索できるわけでもなく、その先生も過去に対応したことのない症状だったようで困惑されていたのですが、その経験をしたことでやはり病気によってそれぞれの専門医に診せることや、自分自身が信頼を置けると感じた先生を探してかかりつけ医にすることが大切だと痛感しました。

 

ほたるは現在、口にエプリス(歯肉腫)ができているのですが、年齢のこともあるので先生と相談しながら手術はせず悪化させないための投薬治療をしています。

 

こんな風にほたるの年齢や日々の様子、体調や性格を含めて犬にとってより良い治療を選択肢に加えてくださる先生と出会えたのは、やはりレディの一件があったからこそ。

 

動物病院に通うタイミングですが、10才を過ぎた頃からは、基本的に少しでも異変を感じたら様子見をせず、すぐに連れて行くようにしています。

 

飼い主が毎日体を撫でたり触れたりしていれば、たとえ小さな出来物やしこりにもやっぱり気がつくもの。

 

11歳で患った乳腺腫瘍を手術した時、3箇所のうち1箇所は悪性腺管癌だったとの後の検査で判明したのですが、この時も毎日触れていたから早い段階で気づけたんだなと思います。

 

ほたるは生来の丈夫な体というものが大きいかもしれないけれど、過去の病気などの際もいち早く気がづき、治療や手術ができたことが19歳という年齢につながっているのかもしれませんね」

 

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自分の好きなようにする頑固者、肝が据わった性格だとは辻さんのほたるちゃん評。

 

普通であれば19歳というハイシニアだとついあれやこれやと人間がサポートしがちになるけれど、辻さんのほたるちゃんへの向き合い方はシニア期の愛犬と暮らす上で学ぶべきところがたくさんありました。

 

辻さん:

「好き嫌いがとてもはっきりした性格のほたるは、年を重ねてもなお自分のやり方を譲らないタイプ(笑)。

 

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見ているとつい手を出したくなるのですが、彼女は彼女なりのやり方をしたいのだから、そこはぐっとこらえて見守りに徹していますね。

 

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トイレまで間に合わずに粗相してしまうことは多々ありますが、ほたる自身がトイレに歩いて向かおうとしていることがわかるので、その気持ちを大切にしています。

 

たとえトイレに間に合わなくても掃除は私たち飼い主が頑張れば良いことなので、年を重ねるほどに何事もほたるの意思を重視するようになりましたね。

 

今は家族のみんなが、いかにほたるが快適にストレスなく毎日を過ごせるか、ということを一番大事に考えています」

 

 

ストレスのない生活は人にとっても犬にとっても健康を大きく左右する大きなポイント。

 

特にほたるちゃんは過去にストレスによってこんなことがあったそう。

 

辻さん:

「レディを見送った時にほたるの毛がどっさり抜けてしまい、そこから犬にかかるストレスについてすごく考えるようになりました。

 

だから今はほたるが苦手なブラシや爪切りも体調を見ながら少しずつ、数日に分けて行ったりシャンプーもドライシャンプーを使っていますね。

 

過去にリフォームをした時に体調を崩した際に実感したのもあって、いかに環境を変えずリズムのある生活を送るかを心がけています」

 

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正しい生活リズムはルーティーンを好むワンコにとって心地よいもの。

 

だからシニアになった今も生活のリズムは基本的に変えない、というのが辻さんがほたるちゃんに課している日々のお約束なんだそう。

 

辻さん:

「健康のため、長寿のために特別に何かしていますかと聞かれたらコレというのはないけれど、強いて言うなら規則正しい生活でしょうか。

 

食事は朝と夜の7時と決めていて、仮に寝ていたとしても起こして食べさせるようにしています。今でこそ散歩は室内になりましたが、この規則正しい暮らしが認知症の予防になっているような気もしますね。

 

あとはもうおばあちゃん犬なので温度管理なども気をつけ、エアコンは外出先からでも操作できるタイプにしたり、2時間を超える留守番はさせていません。

 

やはりほたる中心の生活になってしまうけれど、それが犬と暮らすということ。

 

年老いてなお自分らしさを貫きながら日々を生きるほたるを見ていると、犬から教えられることの多さに改めて驚き、同時に感動します」

 

 

ところで、そんなに長寿でいられるのはやはり何か特別なものを食べているのではないかしらと気になりますよね。

 

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辻さん:

「毎日必ず食べるのはヨーグルトとひきわり納豆ですね。

 

メインの食事はニュートロのラム&玄米のドライフードと圧力鍋で炊いたおじやですが、おじやには少しのご飯にかぼちゃとマイタケ、ニンジンと大根を必ず入れ、あとは季節の葉物野菜など毎回7〜8種類の野菜に低脂肪の豚ミンチ肉などを入れています。

 

そのほかにも茹でたブロッコリーやバナナ、柿といった果物を小さくカットして別皿で用意し、ドライフードに飽きた時にはこれらをトッピング。

 

食が細くなってきたのでお膳のようにこれらを並べ、おじや、ドライフード、ヨーグルトといった順で飽きないように食べさせています。

 

手作り食は以前から本で調べて作ったりはしていたのですが、ほたるが14歳の時に奥歯の抜歯手術をした後は、高齢での手術がよほど体に堪えたのか食べ物も水も一切とらなかったことがあり、もうダメなんじゃないかと焦りました。

 

その時はあれこれ試しても一向に食べる気配がなく困り果てて、どうしようか悩んでいると夫がいつものドッグフードをそのまま試してみたらどうかと提案してくれ、それは無茶だわと思いながらも試してみたら、よほどお腹が空いていたのかパクパク食べてくれてびっくりしたことなんかもありましたね。

 

その時はほたるが生きようとする姿や力に感激しました。

 

それ以来何を好んで食べるか、何ならしっかり食べるかを試行錯誤してできたのが今のメニュー。

 

今はお水を飲まなくても水分を補給できるよう、おじやにはたっぷり水分を入れるようにも気をつけていますね」

 

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取材でお話を伺っていた時、辻さんの言葉で取材スタッフが思わず涙ぐんでしまう言葉がありました。

 

その言葉には年齢を重ねたシニア犬と暮らすオーナーならではの愛犬との向き合い方のヒントがギュッと詰まっている、そう感じたのです。

 

辻さん:

「ほたるを迎えた当時一緒にお散歩していたワンコたちはもう旅立っていて、今もほたるといると、その頃のお散歩友達にほたるが存命だということで驚かれる機会が多々あります。

 

ほたるが長生きなのは、きっともともと丈夫な体に生まれついたというのが一番大きな要因だと思うのですが、今現在の彼女の日々を見ていると、ここまできたらオーナーとしてはもう、長生きさせたいという気持ちはそんなにありません。

 

それよりも、目も見えなくなりきっと体のあちこちに違和感はあるだろうけれど、それらを全て受け入れて、今この時を一生懸命に生きている彼女が、どうか旅立つその日までなるべくしんどい思いをせず毎日を快適に暮らしてくれればいい、そう思うのです。

 

無理をすることなく、この子が持って生まれてきた生きる力を存分に、最後の1適まで使って生きて欲しい。

 

だから私の信条は、日々を普通通りに暮らすことです。

 

特別なことをするのが怖いという思いもあるし、なるべく穏やかで変わりない日常をほたるがほたるらしく生きられるようにすること。それが何よりなのです。」

 

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今回の取材、普段はほたるちゃんがお昼寝をしているという時間帯にお邪魔したのですが、誰かが来る雰囲気を察したのか写真撮影があるから頑張ってくれたのか、ほたるちゃんは取材陣がいる間中ずっと起きて歩く姿を見せてくれました。

 

オーナーさんに抱っこしてもらうシーンの撮影では「ガルル…そろそろ下ろしてよ〜」という自己主張までして場を和ませてくれるサービス(?)まで。

 

今では白くなってしまった目も、少したどたどしいその歩き方も。

 

ほたるちゃんのそれらすべてが美しく愛おしい。

 

犬も人も歳を重ねることは決して良いことばかりじゃないけれど、長い年月を共に過ごすことでより強固になっていく人と犬との絆の目の当たりにし、改めて犬と暮らすことの喜びを見出せたように思います。

 

 

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取材時19才7ヶ月の女の子(生まれ)

 

ほたるちゃんママ(辻 実千代さん)

 

ご夫婦で愛犬とともに暮らすほたるちゃんママですが、実はご主人は最初犬が苦手だったそう。しかし先住犬のレディを迎えて以来大の犬好きとなり、今では貫禄漂うほたるちゃんを上皇后様と呼ぶほどにメロメロに。

 

photo:SUMiCO

text:Aiko Yokota